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東京の待ち合わせ

修学旅行の土産

田舎者としては東京は特別な場所だ。

もう20年も前の話になるのか。高校の頃、一つ上の先輩たちの修学旅行先が東京だった。九州の高校の修学旅行先として東京は丁度いい遠さなんだろう。

修学旅行から帰ってきた先輩は、部活の後輩である我々におみやげを渡した。箱菓子だ。あけてみるとそれは「ナボナ」だった。

「ナボナ」

「ナボナ?…あー。ナボナ!」

王選手(現ダイエー監督)が盛んにコマーシャルをやってるという、例の。九州ではそんなCM流れてないから誰一人としてそのCMを見たことがない。それでも知っているのは、ギャグ漫画で王選手が登場する時、「ナボナはお菓子の…」と言いながら出てくるのが常だったからだ。

ナボナに限らず、ギャグやパロディには東京ローカルなネタが多く、地方出身者には理解できない笑いがあった。何がオカシイの?ってところで大爆笑が起こったり。

「東京の笑いはシュール」

そんなズレた認識が、より東京をカッコよく感じさせるのだった。田舎者にしてみると。

おいおい

高校を出ると、進学や就職で地元を離れる人が増える。行き先で多いのは東京だ。国内の最大都市だから当然と言えば当然なんだけど。

東京に関する情報はメディアから豊富に流れてくるから、さほど戸惑うこともなさそうだが、意外なところでつまづいて恥をかくこともある。「吉祥寺」をキッショウジと読んでみたり。

ある日のことだ。ふと高校の同級生とバッタリ会った。九州の知人と東京でバッタリというのは本当に奇遇で、驚きと嬉しさとで互いに盛り上がる。

「今、どうしてるの?」

「●●で××を…、オマエは?」

「□□さ…で、これから△△に行くところで急いでるんだけど、今度会おうや」

「いいね。じゃ、電話番号はね…」

ということになる。落ち着いてから電話をすると、昔の仲間の近況の長話のあとで、今度会う待ち合わせの話になる。

「○日はどうよ?」

「あ、大丈夫。昼頃にしようか。」

「いいよ。じゃ、1時ね。待ち合わせ場所は…」

「あそこにしよう。おいおいの前。」

「おいおい?おいおいって?」

「おいおいも知らんのか。田舎者はコレだから。大きい看板が出てるから行けば判るよ。オイオイ、ってローマ字で書いてあるから。赤い看板に。」

オイオイって…OIOI…田舎者はどっちだよ。


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