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アメリカに行こう (7)

ラスベガスへ

カフェで一息ついてアヤシゲな液体をオイルに混ぜてラスベガスへ向かった。

なんと、例の液体の効果もあって液漏れが一滴もなかった。よかった。心安らかにバグジーの街で楽しむことにする。夜になるとネオンで溢れてる。コンビニでさえもこんな有様だ。

ラスベガスではセブンイレブンでさえこんなん

その後、サンディエゴに向かい、メキシコのティファナに寄る。歩きで出入国した。

以前、車を買うより借りたほうが利口だと書いたが、一つ例外がある。アメリカからメキシコ、あるいはカナダへ向かうなら買うという選択もアリだろう。レンタカーでは国境を越えられないからだ。買った車ならどこへでも行ける。もっとも我々は徒歩で十分だったけれども。

サンディエゴからL.A、そしてサンタバーバラに何日か泊まりながら北上し、サンフランシスコに戻った。やはり山地や曲がり道では漏れ始めた。漏れがひどくなれば、例の液体をまた継ぎ足した。

サンフランシスコでの買い物

世話になった修理工場に車で行って、状態を見てもらいながら、これまでのことを説明した。異臭が漂ってたこと、煙を吹いたこと、オイルの液漏れが止まったこと、など。私としては楽しい思い出として幾分興奮気味にしゃべっていたかもしれない。が、聞いていたオヤジさんは、どちらかというと曇った表情だった。

「火を噴いたかもしれないよ」

とオヤジさんは言う。火を噴かなかったのは運がよかっただけだ、と。漏れたミッションオイルはエンジンのどこか高温の部分に垂れて焦げた煙だ。それは熱したフライパンに油をたらしたようなもので、静電気や何かの弾みで引火したら火だるまだったぞ、と。一人で人も通らないような山の中でトラブったらどうするんだ、と。

シーリング液にしても、内側から皮膜を作るだけだから負荷が大きくなれば当然はがれてくる。表面的な対策にすぎないから、根本的な対策が必要だとも言っていた。

事の深刻さを知らされると、断念せざるを得ない。その日、1ドルの油性ペンと2ドルのパネルを買った。白いプラスチックのボードに真っ赤に白抜きでこう書いてあるやつだ。

「for SALE」

これをリアスクリーンに立てかけた。連絡先を宿泊先にして待つが、そう簡単には売れない。もうすぐ友人Aが帰国する日も近い。彼が帰る時までに売れるだろうか。

ばいばい仔馬

数日後、駐車中の車に紙切れが挟まっていた。欲しいらしい。やった!早速連絡を取ると、会話がなんとなくかみ合わない。困った。とりあえず会う約束だけは取り付けた。その前に例の液漏れ防止のシーリング剤をたっぷり多めに入れて誤魔化してしまおうと小ざかしい作戦を取る。

例によってカード会社に紹介してもらった日本語の通じる保険屋さんに間に入ってもらって交渉に向かった。着くと、相手の家には大きくこう書いてあった。

ESPER

って、もしかしてエスパー?超能力者のことですか?ガラスの向こうを覗き込むと東洋風の絵で十二支の書いてあるカレンダーが掛けてある。お香や水晶玉もある。どうやら占い師とかそういった職業らしい。オイル漏れなんてあっという間に透視されてしまったりして。

ところが登場した「ESPER」は日系でもチャイナでもなくイラン人だった。なぜ干支?という疑問はさておき、交渉に入った。試乗させて欲しいというまっとうな申し出をイヤとは言えずOKした。アップダウンの激しいサンフランシスコの町を走ると、早速液漏れが始まった。透視なぞしなくてもすぐに分かるのね。結局、買値とは比較にならないほど叩かれて売ることになった。売れただけでも何よりだが。こうして長かったような短かったような、車での旅行は幕を閉じた。友人Aも帰国し、一人で仕切りなおしの旅にでることになった。

そこからはアムトラック(大陸横断鉄道)で移動し、場合によっては行く先々でレンタカーを借りたりしながら旅行を進めた。

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当分は無理なのは分かりきってるが、もう一度、余裕のあるスケジュールでアメリカを旅行することがあるならば、それでもやっぱり車での旅行をしてみたい。買うつもりはないけれど。

(この項終わり)


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