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アメリカに行こう (6)

死の谷

イザベラレイクを出て、我々は一路東へ向かった。ボンネットから煙を吹くこともあった。そんなときは車を止めボンネットを開けて煙が収まるのを待ってから再出発をした。地図によると、これから先デス・バレーと呼ばれる砂漠地帯を横切ることになる。軽く100km以上は文字通り何も無い。一本の道路と、それに平行して電話線が一本頼りなく伸びているだけだ。ここを右折するとデスバレー、という最後の曲がり角にはちゃんとガソリンスタンドがある。しっかりガソリンを満タンにしてミネラルウォーターを大量に買ってから突入する。

砂漠を突き抜ける一本道。左に砂丘があるらしい。今回は割愛

砂丘でない砂漠というのはこんな感じ。突っ立ってるのが私

しかしミッションに負担がかかるのは坂と曲がりの多い山道であって、こうした平らな場所では案外安定しててオイル漏れも少なく、緊張した割には、(たまにボンネットから煙を吹くことを除くと)何事も無く、無事に横断できた。

ネバダのカフェ

デスバレーを抜けると、T字路に突き当たる。あとは右にまっすぐ行けば目をつぶっててもラスベガスだ。

そのT字路のあたりに、何軒か店がある(店以外は周りには文字通り何もないが)。コンビニ、カフェ、ガソリンスタンド、等。中に入ると全ての店がつながってて一組の夫婦が切り盛りしてるようだ。とりあえずカフェでサンドイッチとアイスティーを注文する。くたくただ。山でも砂漠でもすんなり走ることはない。走っているとなんとなく焦げ臭い臭いが漂ってくる。ボンネットから煙がでる。とめる。空ける。休む。煙を浴びると体中にべっとりと油がつく。そんな状況では安心できないから、何より精神的に疲れる。

カフェの主人は黙ってメニューを作る。婦人は40歳くらいだろうか。若くはないが昔は相当な美人だったろう、今だって美人といえば美人だが無愛想だ。

アイスティーは飲みきれないくらいの大きなグラスに氷がたっぷり入っている。6割方飲んだあたりで例の無愛想な婦人がむっとしたような表情のまま黙ってグラスを取りあげてアイスティーをまたなみなみと継ぎ足してくれた。愛想は無いが気が利いててサービスも良いというのが奇妙だ。明るい雰囲気のカリフォルニアとはまた違ったネバダの田舎の空気を感じた。ホーリー・コールが聞こえてきそうなバクダッドカフェのような雰囲気で、これはこれでなんだかほっとする。

小腹を満たした我々は、目的もなく店内をぶらぶらとふらついて商品を見て回った。コンビニの一角はカー用品が置いてある。私はそこであるボトルに目を止めた。ん?トランスミッション…オイルリーキング…ストップ…シーリング?英語が堪能とは言えない私は何度も説明書きを読み返した。どうやらミッションオイルに混ぜることでオイル漏れを止めるものらしい。ピンポイントで私が最も欲しいものだ。そんな都合のいいものがこんな少ない品揃えの中にあるか?

とにかくダメモトで2,3個買って早速注入する。

(つづく)


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