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アメリカに行こう (1)

計画

どうしてもやっておきたい事があった。ゆっくりとした旅行。旅行というより旅とよべるもの。できれば海外旅行。30代では難しいだろう。社会人になってからでは難しいだろう。20代のうちに、そんな旅行に行きたい。

とは思ってはいたが、学生のうちにそんな旅行には行けなかった。社会人として勤め始めて、とうとう旅は実現しなかったなと思ってたが、いろんな事情や都合もあって、あるときその会社を辞める決意を固めた。そして、辞めたらまず旅行に行くことにした。20代も終盤、28歳の頃だ。

幸い同時期に会社を辞める友人Aと一緒に行くことになり、他に同行することになった学生の友人Bもいて、3人で旅行に行こうという話になり、お金の準備と旅行の計画を詰めていくことにした。

時期は翌年4月。旅行先はアメリカ。一周しよう。アメリカ旅行するなら車でいこう。車は…買おう。という話になった。

第三者の意見

旅の計画を第三者に打ち明けると、たいていよからぬ入れ知恵がある。中途半端に聞きかじった知識で適当なアドバイスを真顔でくれるのだ。いわく、アッチ(海外)で車(もしくはバイク)を使うつもりならアッチで免許を取ったほうが取得が簡単でいい、日本ではその免許で運転できるのだ、とか期間が長ければ車はレンタカーより買うほうが安くていい、とか。

皆さんはこんな適当なアドバイスに躍らされることのないように。両者に反論しておくと、海外で免許を取りそれを日本で利用するには3ヶ月の現地での運転実績が必要になる。しかしアメリカのビザなしでの普通の滞在期限は3ヶ月である。つまり物理的に不可能なのだ。これを可能にする裏技までは否定しないが、こういうことを知った上で「現地で免許を取ったほうがいい」という人はいないだろう。

また、購入するほうが安いというが、結局日本と同じで安い車は故障や不具合のリスクが高くそれなりの車はそれなりの値段になる。保険も入らなければ走れないのは日本と同じだし、車検に相当する登録は当然あるし、それを取得するには当地における固定した住所が必要になる。車に関する構造的な知識も一定以上ないと危険だ。購入に当たっては交渉できるだけの英語力、それも日常会話ではなく車と保険と契約に関するボキャブラリーと知識が要る。つまり普通の旅行者には難しいのだ。たったいくらかの浅はかな損得勘定に惑わされることなく素直にレンタカーを借りるのが何万倍か利口というものだ。自信をもってそれは言える。

なぜなら、私こそがそんな無責任な第三者のアドバイスに惑わされた当人だからだ。

北の国から

時期は某年4月上旬ということになった。アメリカを車で回るという素敵なプランはいいとして、俺は免許を持っていなかった。同行の友人Aはペーパーだ。学生の友人Bはかなり頼りになりそうだ。

友人Aには、アメリカじゃぁ日本より運転は楽みたいだから大丈夫だよ、それでもペーパーは困るから練習しといて。と言ったが、お前も免許は取れよと返されると、分かったとしか答えようがない。私は会社を辞めるとまず免許を取ることにした。

教習所から見下ろす風景。あの道で路上教習旅行を目前に控えた3月中旬、私は岩手にいた。合宿免許に行っていたのだ。雪もちらつく北国であることを置いておくと、交通量も少なくアメリカをシミュレートするには最適なロケーションだ。

そんな私の元へ不幸な知らせが届く。例の学生の友人Bが参加できないという。進学とか留学とかそんな理由だったと思う。さらに友人Aは子供が初夏には生まれそうなので旅行期間を1ヶ月で切り上げたいという。一ヶ月だから一周は無理だろう。小さく周遊したいとのことだ。これも仕方ない。最初の一ヶ月は行動をともにして、残り2ヶ月は一人で好きに動くさ。それにしても車のほうだが、現状の計画のままいっていいものかどうか不安になる。一人当たりの出資額も大きくなるし。車計画は見直すことも視野に入れねばならないという弱気意見を友人に漏らしてしまうが、これがさらに不幸を広げることになるとは、このときは分からなかった。

免許2日で

岩手での合宿を終え、最終的に免許を取るのは東京に帰ってから(当時私は都内に住んでいた)になった。問題なく免許を取ったその日のうちに国際免許も取っておいた2日後にはアメリカに行く。車を持つ友人に頼み込んで車を借り埠頭に向かい運転の練習をさせてもらったが、なかなか上手い運転とはいかない。ミッションチェンジも上手くない。アメリカではほぼオートマだから大丈夫だと思うことにした。

ホテルから見えるmidwayレンタカー

ロスアンゼルスに着き、シャトルバスに乗って着いた先は同名の別ホテルだったというのは愛嬌。そこから歩いて自力でホテルについて荷物を置いて、早速出かけた先はレンタカー屋。おあつらえ向きにホテルの隣にある。早速借りて乗る。右側を走るよ。免許取立てといえど最初は戸惑うね。右左折時にウインカーの替わりに窓を磨くというのはお約束。

とはいえ日本とは大違いの交通量の少なさと整った道路。クランクもS字もない。見通しはおおむね良いし直線路が多い。運転ゲームの難易度を上げるためにわざと配置されたような見通しを悪くする路駐も無い。マス目になった街路は予想しやすく運転してて無理がない。そのとき私は確信した。

「思ったとおり、日本より運転しやすいし、イケルぞ」

と。

(つづく)


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