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レタスが苦手な男

レタス

「…朝歯を磨いてると妙に痛くて口をすすぐと真っ赤なのさ。で、おかしいなと思ってよく見たら歯ブラシじゃなくてカミソリでさ…」

などというあまり趣味のよくない話をしては相手が嫌がるのを楽しむようなFという男は、どちらかというと豪胆なヤツだと周囲の人間は見ていた。そのFが、サラダを食べる時はなぜか神妙な顔つきでレタスを弄り回しては食べている。サラダが嫌いなのかと聞くと、いやレタスがちょっとね、と答える。レタスが嫌いなのかと聞くといやそういうわけじゃないんだがと答える。どうもハッキリしない。どういうわけかと聞くと、

「いや、実は昔…」

と、理由を教えてくれた。

前歯の間

ある日、粗く切ったレタスの入ったサラダを食べていたところ、口の中に異物感を感じたFは、口の中に指をいれてその異物をつまんだ。親指と人差し指で。

異物を口から引き出した。咀嚼中の食べ物も一緒に出て行かないように、つまんだ先端が口から出たらすぐに口を閉じ、前歯の間から異物だけ引っこ抜いた。ある程度細長い異物のようだ。

引きずり出した異物を目の前に持ち上げると、それはなんとぺったんこになった青虫の皮だった。そう、F自ら中身が口の中へ残るように歯でしごき取った形になったわけだ。あわてて内容物を吐き出して口をゆすいだのは言うまでもない。それ以来、レタスを食べるときは一枚一枚裏側を確かめてから食べるようになったという。

ちなみにお味のほうは青臭くて苦い味だったらしい。


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