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田園の飛騨高山ラーメン

一人ツーリングで見知らぬ山道を走行中のこと。

すでに昼を回って二時くらいになった頃合。腹が減ってもコンビニもなし。さっき××で食べてればよかった。

ふと目に入る看板。「飛騨高山ラーメン」という小さな看板。しかしそこにあるのは、一般住宅としかいいようのない、一軒家。えー?ラーメン屋さん?これが?

良く見ると玄関っぽい扉には「営業中」のプレートが。店…だよ、ね?

いやいや。これはもしかして。「隠れた名店」では?やたら旨い蕎麦屋が山奥の店っぽくもないところで商ってたり、レストランやなんかでもそういうの、あるよね。経験からいってもそういう店はだいたいかなり旨いもんだ。

バイクを停めて扉を開ける、そして中を見て驚愕。

水商売で使いそうな厚みのあるソファとテーブル。少し暗めの照明。壁際は一段高くなっていて、つまりステージだ。マイクもある。壁には演歌歌手のポスターがベタベタと。

カラオケ喫茶だ。

中では高齢の地元の方々がお食事歓談中。

ヤッチャッタよ。いや、あの。その。この。

しかし勢い良く開けて

「失礼しました~」

なんて帰るにも帰れず、というかあまりの予想外の事態に凍っていたところ、ママさんが

「お食事?いいですよ」

なんていうからそのまま入ってとりあえずボッタクリな価格でもないしまぁいいかとなんとなく座る自分。

私「えと、あの、食事は」

ママ「飛騨高山ラーメンとかr

私「あ、それ、ラーメンください」

で、待ってる時間が長い長い。針刺すような疎外感と気まずさ。体内時間で5時間ぐらいは経った頃ですかね聞こえてくるわけです。

「(リクエストを)入れたら」「入れなよ」

みたいな会話が。

すると、おもむろに立ち上がるおじさん。50代くらいですかね。小柄でお腹の出た白いものも増えてきてる感じのお父さん。唄うのか。唄うのね。

ステージに向かうわけです。モニタには山本譲二の姿。思いのほか高い声でビブラートを効かせて唄ってる間自分は冷や汗をかく以外何をしろと?何かのプレイ?それはどっちの?

終われば拍手か。するのか俺も。ラーメンまだ?

といいつつなんとなくなじんできた自分。でもまだ次の歌が入ってるよ。またさっきのオッチャンですよ。レンチャンですか?

しかし今度はオッチャンと、おそらく奥さんがステージへ。デュエットですか。小柄なオッチャンはステージのひな壇の端にたち、一回りは背の高い奥さんはひな壇の下に。で、二人の背丈はなんとなく同じというあたり、暗黙のルールというか長いことかけて決まった不文律なんでしょうな。ラーメンまだ?

二曲目が終わってまばらな拍手。もちろん自分も拍手。次はさらに高齢なおじいちゃん。大変な熱唱タイプでそれほどお上手でもなくとてもつらいものがあります。私も人のことは言えませんが。他人でありバックボーンも互いに知らない間であれば対処のしようもなく大変に困りました。俯くほかありませんよ。

どうです一曲とか義理でも聞いてこられたらなんて答えよう。ポリープで医者からカラオケは禁じられてますのでとか何とか言うしか。お、ラーメン、来た?来た。

高山ラーメンというのは食べたこと無いんですが、大変塩辛い黒い醤油ラーメンで、麺が繊細すぎて腰が全く無い以外に特徴らしい特徴もなく、一般受けは難しそうな非常にストライクゾーンの狭いマニア向けな逸品でございました。さてと。

さてと立つのもどうなんだろう。やはりおじいちゃんの熱唱の途中で席を立つのはまずかろう。終わるやいなや席を立つ自分。本当に長かった。さざれ石が巌になって苔むすほどの時間が過ぎたかと思ったよ。

お勘定のときにやはりというか「歌っていかれないんですか?」みたいなことを軽く言われたときにはうそから出たまこと、ポリープのせいか声が出なくて「いや、ははは、ちょっと、どうも、それは」みたいな関係代名詞と接続詞のやたら多い、判で押したような「ダメ日本人」なあいまいさで去っていったのでした。

振り返ると目の高さに「高山ラーメン」の看板が。なんだよチクショウ。よく見るとその向こうに鉄柱が。電柱のように高く伸びて上には「カラオケ喫茶/軽食」のでかい看板。慎重に気がつけよ自分 orz