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渋谷の建築5:名曲喫茶ライオン

Photo by PDA

設計:山寺弥之助 / 竣工:1950年

渋谷はラブホテル街の入り口、百軒店を入って路地を進むと見える名曲喫茶ライオン。クラシック音楽を聴かせる店。名曲喫茶もまた日本独自の文化。欧米では生演奏のほうが高価なオーディオ装置より手軽っていうことなんでしょう。

写真映りも良く、店は装飾的な意匠が凝らしてあるものの、古びたコンクリートモルタルの外装はお世辞にも美しいとは言えません。というのも無理もなく、戦後間もない時期の建築物は皆このようなものです。むしろ、これほど装飾性に満ちた建築物は珍しいです。

裏手に回ると、そちらはそちらで装飾が味わい深い。

lion_backdoor.JPG


百軒店は、もともとは関東大震災で壊滅的な被害を受けた下町の店舗群の仮店舗を集め、ショッピングモールとして栄えていたようです。その後復興に伴い店舗は元の場所に還り、また寂れていくのですが、当初このライオンは昭和元年、この百軒店に建っていますからそうとうに賑わっていた頃でしょう。店主自らが内装、外装全てのデザインを手がけたというからたいしたものです。その後、太平洋戦争に突入し、空襲で全焼してしまいますが戦後、当初と同じデザインで再建します。こだわりと思いいれが深かったことでしょう。

渋谷に限らず、東京は案外明治時代頃の建築も多く残り、近代史を折り重ねたような街は多いです。明治期の雅やかな瓦葺きにレンガ造りのような和洋折衷の建物、銅張りの民家、震災の傷跡、焼け跡闇市を今に伝える商店街、戦後の貧相な建築群、そして高度成長とともに高く成長するビル街、大規模商業施設。そんな大小の建物がアブクのように混在し、交じり合っています。

そんな渋谷にあってまさにこのライオンは近代史を焼き付けた建物だといえるでしょう。

名曲喫茶ライオン

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